第20回大学等環境安全協議会技術分科会出張報告
環境建設系技術班 川口 隆
主 催:大学等環境安全協議会
研修期間:平成16年7月22日(木)〜7月23日(金)
研修場所:金沢エクセルホテル東急
1.内容
【会長挨拶】大学等環境安全協議会 会長 玉浦 裕 氏
本年度からの国立大学の法人化に伴い,我々も安全衛生管理法の適用を受けることになり,本協議会の使命が益々重要となってきた.本会では実務的な管理者である教員,技術職員,事務職員の構成員が集っていることから,みなさんで法人化後の方策について積極的な議論を重ねて欲しいとの意向が伝えられた.
【来賓挨拶】文部科学省大臣官房文教施設企画部 参事官付企画官 加太 孝司 氏
大学の社会的責務を考え,京都議定書の話を基に地球の環境負荷が少なく,社会的にも受け入れられる研究・教育環境整備および化学物質等の管理をさらに適正に進めていくことが重要であると述べられた.
【特別講演 BSE(狂牛病)対策のその後】
金沢大学名誉教授・金沢市都市政策部 環境技術顧問 小森 友明 氏
BSEとは牛が異常プリオンに汚染された牛の肉骨粉を食べることにより感染するとされており,感染した牛は,タンパク質の一種「プリオン」が異常化して脳がスポンジ状となり、死に至る病気である.現在国内においてBSE検査時における感染の有無に係わらず,危険部位はすべて除去し焼却処分されている.一般に当時問題となったのは,家畜飼料として供給されていた肉骨粉である.2003年4月以降から肉骨粉は一般廃棄物,危険4部位(脳,脊髄,眼,回腸遠
位部)および病蓄(死亡した牛)は産業廃棄物として区分され,全て焼却処分が義務づけられている.石川県では食肉流通センター内にて,病蓄,牛の特定部位等を合理的,衛生的に処理するために,有毒ガスを除去し,ダイオキシン類排出規制にも適合している固定床バッチ炉を設け,事態に対応をしている.これらの事項につき,小森氏から焼却における問題点,食の安全性についての取り組み等についてユーモアを交えながらの講演であった.
【独立行政法人化後の実際 −監理・教育がどう進んでいるか−】
東京大学,京都大学,東京工業大学から法人化前の準備,法人化後の取り組みについて,プレゼンテーション方式による説明があり,その後,質問形式による討議が行われた.最も先進的であったのは東京工業大学の対応であったと感じた.これは総合安全管理センターの設置により,現在の部局で分散して実施されていた環境保全,健康安全管理,防災・交通安全等の安全管理を一元化し,機能的,かつ効率的に業務を実施しようというものであった.討議中,会場内の参加者の総意として,「今まで大学自治の下,安全管理業務や安全に対する意識がややないがしろにされてきた感がある.」と率直に質問者および登壇者から述べられていた.なかでも,大学内における実情として,安全管理を厳しく進めていくことにより,研究に支障が出るという考え方が大勢を占めている中,実際の現場で安全に対する意識改革を進めていくことの難しさが課題として挙げられていた.
【「廃棄物処理外部委託のための技術ガイドライン」の活用方法について】
吉備国際大学 政策マネジメント学部 環境リスクマネジメント学科 教授 井勝 久喜 氏
平成12年の廃棄物の処理及び清掃に関する法律の改正により,排出事業者の責任が強化されたことから,不適切な処理が行われた場合には,排出事業者に対しても原状回復命令が出されることになった.このため,廃棄物処理業務の委託にあたっては,許可を取得している業者であっても廃棄物の内容,量に応じて,業者の適性や能力を検討することが必要となってきた. これらの背景を受け,大学等環境安全協議会では「廃棄物処理外部委託のための技術ガイドライン」を作成した.作成の大きな目的は,排出事業者である大学の基本姿勢を示し,委託する廃棄物処理業者を選定するにあたり,処理費のみを基準としたものではなく,明確な選定理由として処理能力や技術力の評価を的確に行うことにより,不適切な廃棄物処理を未然に防ぎ,安心・安全な廃棄物処理業務を遂行できることが掲げられている.実際に各大学の廃棄物処理業務実務者にガイドラインを配布した結果について,活用状況のアンケート評価を行った.上手く活用されている大学もあったが,未だ参考程度として利用されている大学も多かった.その理由として最も多かったのが,処理業者に対して処理状況等の資料を提出させる時間的余裕がないという答申であった.また,契約上の仕様に採用することができないという問題点も出てきている.現状として,環境省では産業廃棄物処理に対する社会的要請に応えるために廃棄物処理業者の評価・格付けについて行おうとしている.しかし,排出事業者である各大学においても,本ガイドラインの内容を参考に,管理業務の徹底を図って頂きたいと考えている.
【実務者連絡会企画プログラム 法人化後の現状についてのディスカッション】
本会の実務者連絡会世話人である浜松医科大学医療廃棄物処理センター 鈴木一成氏の司会により,法人化前後の安全管理業務の変化や対応について,会場聴衆者に対して挙手方式によるアンケートが実施された.また,現在の安全管理業務の問題点について,各大学の現状について意見交換を行った.総括では,大学における労働安全体制の確立,構成員である教職員・学生の作業環境管理および健康管理業務を確実に行うためには,実務者が労働安全衛生法を良く理解し、遵守することが重要であることを互いに認識した.さらにこれらかも本会等を通じて安全衛生管理について,大学間で異なる実状を公開し,みなさんと問題点を討議し,得られた知見をまとめることにより,大学の環境安全に対して提言・提案していきたい方針であると述べられた.ディスカッション内において,研究で試料として使用されている汚染物質等の取り扱いについて,質問させて頂いた.質問に対し,協議会の玉浦会長より,「大変憂慮すべき問題であり,状況把握も出来ていない現状にあることから,協議会内においても早急にワーキンググループの立ち上げを検討致したい.」とお答えを頂いた.
2.会議に参加して
今回の会議参加に際して,浅学な私に廃棄物処理業務に対して知識を深める機会を与えて下さった工学部事務長補佐
松本 正 氏,並びに技術部の方々へ感謝申し上げます.また,懇親会や休憩時間において,大学の環境安全問題について,熱心に御教授して頂いた,麻布大学
中明賢二先生,東京工業大学 玉浦 裕先生へ,ここに改めて御礼申し上げます.